男性の葬儀における靴選びの鉄則は、「黒の革靴」で「紐(ひも)が付いていること」であり、さらに言えば「内羽根式(靴紐を通す部分が甲革と一体化している)」の「ストレートチップ(つま先に横一文字のラインが入っている)」が最も格式高いフォーマルシューズとされています。なぜ紐靴でなければならないかというと、靴紐を結ぶという行為が「身を引き締める」「心を引き締める」という精神的な意味を持ち、儀式に臨む真摯な姿勢を表すとされているからです。一方、ローファーはスリッポン(Slip-on)の一種であり、足を滑り込ませるだけで履ける構造は、室内履きやカジュアルウェアに由来するため、フォーマルな場では「略式」あるいは「遊び着」とみなされます。特に、金具がついたビットローファーは、光り物がタブーとされる葬儀では論外ですし、タッセル(房飾り)がついたものも装飾過多と判断されます。ただし、紐靴であれば何でも良いわけではなく、つま先に穴飾り(メダリオン)があるウィングチップなどは華美すぎるためNGですし、モンクストラップ(ベルト留め)の靴も、金具が目立つものは避けた方が無難ですが、シンプルなシングルモンクであれば準礼装として許容されることもあります。また、革の素材についても、エナメルのような光沢の強いものや、スエードなどの起毛素材、クロコダイルなどの型押しは殺生を連想させるため避け、スムースな牛革(カーフ)を選び、ピカピカに磨きすぎない程度の自然な艶に留めるのがマナーです。男性の足元は意外と見られており、スーツが立派でも靴がローファーだと一気に格が下がってしまいますので、冠婚葬祭用として「黒の内羽根ストレートチップ」を一足持っていれば、結婚式から葬儀まで全てのシーンに対応でき、生涯にわたって恥をかかずに済む最強のパートナーとなるでしょう。